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第16回研究助成セミナー

更新日: 2016/10/30

第16回(2016年度)研究助成セミナーのお知らせ

研究助成委員長 藤井 香子

第16回(2016年度)研究助成セミナーを、下記の通り開催します。本年度は、「中世英文学におけるラテン語」をテーマとして、講演に1名の講師、講読会に2名の講師をお迎えし、のべ3日間にわたって開催します。学会員皆様の奮ってのご参加をお待ちします。

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1.テーマ:中世英文学におけるラテン語

2.講師:海老久人(神戸女子大学)、石黒太郎(明治大学)、大沼由布(同志社大学)(敬称略)

3.日時:
講演:2016年12月9日(金)午後5時30分~
講読会 (1):2016年12月10日(土)午前10時~正午
講読会 (2):2016年12月11日(日)午後2時~4時

4.場所:関西大学千里山キャンパス 第1学舎4号館及び百周年記念会館
(教室番号等は後日、参加者に連絡します。)

5.概要:
講演:「英語国語化と14世紀イングランドの多言語環境の中のチョーサー」
講師:海老久人

14世紀ヨーロッパの言語環境はラテン語中心から各国の自国語確立へと大きな変化の流れを経験していた。イタリアではダンテが『俗語論』(De Vulgari Eloquentia; 1302-1305)と『神曲』(La Divina Commedia; 1304-1321) を、イングランドではウィクリフが自国語訳聖書 (1382) を完成させている。

そうした状況の中、14世紀イングランドの言語環境は、カトリック教会の支配言語ラテン語、11世紀以来の世俗的支配者言語フランス語(アングロ・フランス語)、そして被支配者言語アングロ・サクソン語(中英語)の共生だった。支配者言語が被支配者言語を圧迫・排除する状況はこのイングランドでも同じだった。たとえば、1295年、イングランド国王エドワード一世は対フランス戦争の戦費支援を議会に要求する時の口実に言語問題を取り上げる:「フランス国王はイングランドの地から完全にイングランドの言葉【つまり、英語】を抹殺するとおどしている。」([Rex Franciae] linguam anglicam … omnino de terra delere proponit.)

言語は時の(国際)政治力学に左右されることは、時代と洋の東西を問わない普遍的事実だ。チョーサーもラテン語とフランス語学習は必須で、イタリア語だけは彼自身の嗜好から自発的に学習され習得された言語である。彼自身の多言語環境の中で、何故英語で書き続けようとしたのか。14世紀から15世紀の英語国語化の流れの中での多言語環境を俯瞰してみたい。

講読会:「The Letter of AlexanderにおけるAlexanderとPorus」
講師:石黒太郎、大沼由布

講読会 (1) ではThe Letter of AlexanderでPorusが現れる2編のラテン語テクストを講読し、講読会 (2) では (1) で読んだテクストに関連する他のラテン語作品を講読する。必要に応じて、ギリシア語、古英語、中英語作品の関連箇所も検討する。

6.申し込み方法:参加ご希望の方は、電子メールで以下の通りに申し込みをお願いします。
申し込み先:takako-f[AT]nifty.com
件名:「第16回研究助成セミナー参加希望」

文面:(a ) 氏名、(b) 所属、(c) Emailアドレス、(d) 講演及び講読会 (1)、(2) のどれに参加希望か(主催者の委員会としては、3つすべてに出席して欲しいですが、皆さまそれぞれご都合もあると思いますので、参加希望を明確にご提示下さい。)、(e) 大学院生または専任職を有さない参加者で、もし補助が出るとすれば希望する場合は、その旨を明記、(f) お弁当希望の有無(講読会 (1) の後と講読会 (2) の前、両方またはどちらかを明記)。

7.講読会の形態:(ご担当の講師の先生方より)
講読会 (1)、(2) ともに、出席者に予習してきてもらい、訳を発表してもらうことを基本とします。そのため、講読会の内容を理解するために基本的なラテン語知識が必要ではあるものの、訳の発表を望まない参加者については、発表の強制はしません。

8.講読会の事前課題について:参加申し込み締め切り後に、該当する参加希望者に資料を添付メールでお送りする予定です。11月初め頃になる予定です。

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研究助成セミナーの主旨に鑑みまして、「若手優先で先着順」というスタンスで、今年度のセミナー申し込み受け付けを行う方針です。この点、ご理解を頂けますようお願い致します。なお、講読会の形式の都合上、参加人数を原則「20名程度」とさせて頂きます。

【問い合わせ先】研究助成委員会委員長 藤井香子 (takako-f[AT]nifty.com)